なかなか布団から出られない。あと10分と思っていても、15分…20分と布団から出られないダメ男。いやはや、幾つになっても変えられない習性です。こまった、こまった。
布団から顔を出し、のそのそとベッドから起きて、窓のそとを眺めると…そこには幻想的な真白の世界。ロマンチックな雪ではなく霧でした。出社の支度をして外に出ると、困った…10メートル先の視界がはっきりとしない。これほど濃い霧に身を包むのは、久しぶりの体験でした。フランス旅行で冬の早朝のパリ市街を散策した時以来でしょうか。幻想的な世界に出会うと、ついついカメラに収めたくなりますね。
さて、今日は幻想的な世界から狂気の世界まで、幅広いジャンルの物語があり、古き日本人に親しまれていた芸術から、この本を紹介。
能で表現される世界は、非常に興味深い。というのも、主役の表情・感情は面を伝ってしかわれわれ観客に届かないからだ。能は、表現者だけでなく観客のほうにも相当の「真贋力、知識力、感性力」を要求する。例えば、物語のあらすじ・展開性を理解するに、時代背景・心情描写を読み取る能力が必要とされる。「あらかじめ、勉強してからお越しくださいませ。もし、楽しめないようであれば、それは我々だけでなくお客様にも非がありますのよ。」…予め勉強する、それも能の台本だけでなく、当時の街並みがどういったものであったか、どんな芸術を軸に文化が築かれていったのか、そういったところまで勉強する。そうして初めて能を堪能できる「観客」になれる。
本書は代表的な曲目を「女性像」にターゲットを絞ってわかりやすく紹介・分析してくれる。分析に関しては、結構主観的な分析・独白もあるので、それはそれで楽しく読める。紹介されている曲目のうち、興味深かったのが、老人の女御への恋とその報復を綴った「恋重荷」。この女御の人生の閉じ方に対して、読者・観客が各々「どのように感じているのだろうか」を考えてみると、面白い心理分析になる。
最後に、能の曲目構成を紹介する。能は基本的に5つの曲目を一日で行う。そして、その5つの曲目構成は、序(1段)・破(3段)・急(1段)で分類されている。静かにしっとりと始まり(序)、次第に盛り上がりを見せてピークに達し(破)、興奮冷めやらぬうちに一気に終盤に持っていき(急)、曲目を終える。それはまさに、人間の人生そのものではないか。何も知らずに生まれて、自然・ヒトと触れ合い多くの経験を積み上げつつ人生の謳歌を堪能し、そして満足に達しつつあるところで息を引き取る。能の敷居が高いのは間違いない。しかし、そこから得られるものは芸術としての楽しさだけでなく、生きていく上での悟りにも似た感覚を我々に与えてくれるだろう。
※序破急は、日本の芸道論にしばしば使われているようです。ちなみに、エヴァンゲリオン新劇場版のタイトルにも使われていますね。
