さて、自動車業界と密接な関係にある会社で働き、上司から「車買わないの?」という一種のパワハラをうけているえびすが紹介する本はこちら。
本書は、以前に紹介した「コンテキスト思考」の「連関にあるストーリー」を読み取る能力を、もう少し幅広く経営全般にまで拡張して論じている。根幹にある哲学は、「面白いストーリーこそ、皆(スタッフおよびお客さん)が聞きたがるし、自分の強み(自社の強み)になる」ということだ。
巷にあふれる経営を語った多くの本に記載されている「テンプレート」、これを利用し、企業の利益・経営体制が大きく改善されたという話は、正直聞いたこがない。テンプレートの活用は、経営において重要な《要素》を明確にできるだろう。しかし、企業は個々の要素が独立して成り立っているわけではなく、それぞれの要素が相互に連関しあいながら成り立っている。
コンサルタントなどは、こぞってこのテンプレートを用いたがる。なぜなら、彼らにとって《確固とした成功戦略》が飯の種であり、顧客に対してプレゼンスもしやすいからだ。Strategic Position(SP)に偏った戦略にコンサルタントは走りやすい。しかし、SPを重視した戦略は型にはまっているがゆえ模倣されやすく、一過性の競争優位しかもたらしえないかもしれない。
Q.ではどうすれば競争優位を保てるのか?
A.《戦略のストーリー性》に秘訣あり。
本書で挙げられているスターバックス(スタバ)はとても参考になる例だ(09年度上期は苦戦したものの、下期では大幅に利益が改善)。スタバが消費者に提供しているものは何か。ドトール等と何が違うのか。突き詰めていくと、スタバが描く《空間提供のストーリー》が現れてくる。従来の飲食関連のお店だと、利益を上げるために回転率を上げることに必死になっていたが、スタバはあえて《のんびり》と過ごしてもらうことをコンセプトに据えている。この《のんびりできる空間》があって、高めの値段設定が可能となっているのだろう。何かを犠牲にする代わりに、価値ある何かを提供する。”スタバが描いたストーリー=のんびり空間の提供”は見事に消費者の心をとらえた。新しいビジネスのStrong Point=従来の思考の延長線からは生まれないCreationを著者はキラーパスとよんでいる。
キラーパスを戦略ストーリーに埋め込むには、日常の小さな「なぜ」に対していつも考える癖をつけておくことだ。しばしば、ふとした時に全く無関係な方向から解決策は舞い降りてくるもの。固定観念に縛られること無く、柔軟な思考を心がけることが大切だ。
※最後に記載されていた「戦略ストーリーにとって切実なものは何か。煎じ詰めれば、それは自分以外の誰かのためになるということ。自分だけのためでは、スタートダッシュはきくが、長続きしない」という言葉が印象に残っています。本書に記載されている《戦略ストーリーの重要性》は何も「株式会社」に限ることは無いでしょう。NPOにあっても《最低限の利益を確保する》という点で、戦略(事業)ストーリーの重要性は無視できません。今後なんらかの事業をはじめようと考えている方にとって、本書は大変参考になると思います。是非購読あれ!
