2010年10月18日月曜日

小さな世界の中にたたずむ広大な思想

東京都心には無料のギャラリーがたくさんあります。街ごとのギャラリーを紹介する書籍まで出ているほどであります。そんなギャラリーがたむろする東京都心でも、屈指のギャラリー数を誇る街、銀座に本日は足を運んでまいりました。気温も湿度もほどよく、ギャラリーをはしごするには最高のお天気♪ただし、次のアポまで2時間弱しかなかったため、いささか急ぎ足での鑑賞となってしまいましたが、展示されてるのはどれも興味深いものばかり。とりわけ、資生堂ギャラリーの石上純也さんの作品にひどく感銘を受けましたゆえ、今回はこのギャラリー展について少しご紹介したく思います。

建築はどこまで小さく、あるいは、どこまで大きくひろがっていくのだろうか?

これでもかとぎらつく太陽。夏が終わる気配などこれっぽちも感じられない8月の終わり、インターネットの世界をぐるぐる廻っていると一報のニュースが僕の目に飛び込んできました。「建築家の石川純也氏、ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展にて金獅子賞獲得」。金獅子賞といったらグランプリ、つまり一等賞。若手建築家の海外での偉業達成は、ネガティブなニュースばかりが横行し、「なんだかなぁ」と思っていた僕の心に小さな光を差し込んでくれました。

今回、資生堂ギャラリーに石川氏が作った空間は、建築家の作品のなかでもコンセプトと位置づけられる作品です。横一列にずらーっと並べられた建築コンセプトは「この建物を現実の世界で作るのは難しいだろうなぁ」と思うものばかり。でも、あくまでコンセプトですから、それでいいんですね。現実の建築物を作るに当たって必要とされる創造力・構築力を鍛えるという点で、普通の人の想像を超えた建築をコンセプチュアルに考える訓練は、かなり重要な訓練なのではと素人ながらに思ったりします。これは建築の世界に限ることではないんですけれどね。

全56の作品のなかから、印象に残っている作品をいくつかを紹介したく思います。
~No. 11  椅子のスタディ~
針金でできた、個々に独立した椅子たちが、他の椅子と針金を解して「接触」している作品。keyコンセプトは『家族のような椅子』。家族の絆を椅子に落とし込むのですが、石川氏の考える家族は一本の針金で数脚の椅子が繋がっているというのではなく、個々の椅子は独立しつつも、相手の天板、脚、背もたれetc…といった所に結節点を持つというもの。一つの椅子が動くとして、必ずしも他の椅子が動くというわけではない…大変勉強になる作品でした。

~No. 27 天気と家 雨の降る家~
ホルンの形に似た大きな口が天空を向き、その口の中に家がたたずむ作品。なんでも、一度雨が降ると永遠に雨が降り続ける構造になっているのだとか。降り続ける雨がもたらしてくれるもの、それは「自然のメロディ」。楽器などを全く用いずとも、自然を上手く利用した空間を築けば、力技ではなく、自然とゆるりとした娯楽・癒しの場をつくることができる。…いやはや、発想の転換ほど面白いものはありません。

~No. 41 風船と美術館~
風船型のアクリルの透明な空間を、美術館の休憩スペースに持ってくる作品。休憩スペースが完全な外部空間(亜空間)であるため、頭・心・体をリセット・休憩させることができる。一つの完結した空間にしてしまうと、美術館の作品チック(休憩場所かつ作品!?)になっちゃうのではと思いました…が、風船というコンセプトは素晴らしい。美術館の中から『息吹』が送り込まれてきて風船が膨らむ…その『息吹』を送り込んでいるのは他でもない作品たちだという意図を感じ取りました。うむ、本展No.1のコンセプト。


※見て楽しい空間の遊び方の作り方、といった具合の講義を受けることができたように思います。改めて、芸術・アートの可能性は深遠なものだなぁと感じた次第であります。従来の見方を疑う、規制に縛られない、逆の方向を極める…芸術家に限らず全ての人、少し違う世界をコンセプトから考えてみたいという人がたくさん現れると、世の中にもいっそうの多様性が生まれるような気がします。
あぁ、自身も精進せねば…。