2011年1月4日火曜日

For What, the Mat-Boundaries are Existing in This World ?

正月休みはどこへやら。新年そうそうから慌しく動かざるをえない状況に追いやられているのは嬉しい悲鳴ですね。今年は飛躍の年にすべく、色々と新しいことに積極的に取組んでいく所存です。何事も挑戦あるのみ。一先ずやってみよう!結果はどうなるかはわからなくても、やってみることが大切だと、ひしひしと感じている今日この頃。ただし、何をやるにしてもそれなりの下準備と確固たる意志をもって取組まないと、無駄骨になることしばしば。まぁ、下調べをして、重要なポイントを抑えて、何をすればどのように展開していくのかを『頭の中でシミュレート』することを心がけてはいるものの、いざやってみると「あれ?」と思うこともしばしばなんで何とも言えない所もあるですけど。

さて、頭で考えすぎることをそろそろやめい!と知人から叱咤されるも、その叱咤が右から左に自然に流れる思考構造が出来上がってしまっている事に葛藤を覚える悩ましいオトコえびすが紹介するのはこちら。


小谷元彦の作品は昨年度のエルメスギャラリーでもお目にかかっている。独特のガラスから射す光の中に居(虚)をすえた作品一つ一つから醸しだされるAuraに、畏怖と尊敬と嫉妬の念を感じたものだ。当時、私がやられたと感じたのは一つの作品についてというよりは、作品全体が創る独特の『空間』、その『空間』が纏う『質的なモノ』…物質性にとらわれては感得しえない『モノ』ついてであったと記憶している。

4ヶ月という短い期間を経て、再び小谷の作品とあいまみえることができるとは思いもよらなかった。今回の展示会場は現代アートの企画展をしばしば開催している森美術館。およそ、私が都内で最も足を運んだ美術館であろうが、その空間の使い方にはいつも感嘆するばかりである。高い天井はもちろんのこと、広い空間、ギャラリー間のスペース、細部に至りディレクションを可変することができる空間はアーティストにとっては嬉しい限りだろう。今回の展示においても、作品と空間の相性には細やかな手が行き届いているように感じた。ギャラリーを隔てるごとに立ち現れる『新世界』、後ろに残してきた世界とは異なる世界への客観的な誘いを惹起されるのは、今回が初めてのことではない。

さて、空間につてはここまでにして、作品の評に移りたいと思う…が、全て紹介すると、それこそ原稿用紙20枚は軽く超えてしまうため、一つの作品に留めさせていただきたく思う。今回紹介するのは『インフェルノ』。
多角柱の外見の中に佇む空間は『上面/底面:鏡』『側面:スクリーン』『中央:音響装置』だけからなるのだが、上面と底面に設置された鏡が創りだす世界に驚きを覚える・・・底面の鏡をみるやいなや『底なし』の世界を垣間見ることができ、上面の鏡をみるとどこまでも続くそびえ立つ『天なし』の世界に吸い込まれるはずだ。そして、側面のスクリーンに映像が投影されると、いよいよ角柱の中に踏み込んだゲストは『ゆらぎの世界』への旅路を歩みはじめることとなる。『インフェルノ』に見出せるもの。それは、留まっているそれを自覚しつつも、視線に送り込まれる『情報』のために『留まっている感覚』から離脱してしまう感覚だ。確固たる意志をもってここに『留まること』を自覚していたにもかかわらず、視覚から入り込んでくる『情報』によってその意志に『ゆらぎ』が生じる。このゆらぎなる特質は、ちょうどこの世の物質すべてが纏う性質の一つであることは疑いない。およそ私たちが知覚しうる全ての物質が、安定的なポジションに『一に留まることはない』ということは良く知られたところである。近年話題になっている『動的平衡』のフレームを、『視覚から得られる情報』にまで応用/拡張していただければ容易に理解できることだ。

ここで視覚のフレームをもう一段拡げてみたく思う。視覚の世界を超え出でて、我われが感じうる『全てのモノ』が内包しているであろう『ゆらぎ』…漂いつつも、一点に留まらない『モノ』…そして、いよいよ『ゆらぎ』は『思考』の世界にまで及び始める…宗教・民族・哲学・思想・戦争・差別・慈善・エコロジーetc…あぁ、人間『的』存在そのものを再考する必要性はますます高まるばかりだと感じざるをえない。

※この作品一つを体感するだけでも、本展覧会に足を運ぶ価値があると感じた人は多数いるのではないでしょうか?少なくとも僕にとってはそれくらいの衝撃の作品でした。空間の使い方一つで平衡状態を揺さぶられる、その平衡状態は何もアートの鑑賞においてだけではなく、現実に起こっている様々な諸問題にも当てはまりうることだと思います。大切なのはしっかりと自分の頭で考えて、意見をもつこと。そして、その意見をみんなで共有しあうこと…あ、これはサンデル教授のお考えそのものですね。