2011年1月10日月曜日

The Stranger Sometimes Give us a lot of Insights.

最近めっきり草食になったなぁと感じる今日この頃。あ、食欲ですよ。食欲。少しずつ歳を重ねるにつれ、なんとも脂っこいものよりもさっぱりしたものを好むようになってきました。茄子の浅漬けとか、オカラとか、さばの塩焼きとか。昔はガッツリ肉食だったのですが、ふむ。人間の嗜好は変わるものですね…食欲に限らず、本のジャンルや音楽、果ては好みのタイプまで時間と共に変わっていくこと実感している次第です。さて、終着点ではどんな人間になっているのか…夢想するだけで一日が過ぎちゃいそうです。

さて、早速今日の一冊をご紹介いたします。肩の力を抜いて、少し顔の筋肉を緩めるに丁度良い書籍でしょう。ちなみに、あのお笑い芸人3人組とは全く関係ないこと、予め記しておきます。。

商品の詳細

ダチョウ力。何とも脱力感を覚えるこのタイトルをつけた著者のセンスには脱帽するしかない。一度耳にすれば、まず忘れることがないタイトルだろう。なにせダチョウだ。みんなもご存知のあいつに『力』がついているだけ。ただし、この力は本書の論旨と恐ろしいほど合致しており、そのタイトルは間違いなく脳裏に焼きつくことだろう。

ダチョウから想起されるイメージは、卵が大きい・首が長い・つぶらな瞳・高速で走る鳥といった像がおおい。私の周りの友人に聞いても、ほぼ100%上に挙げた類に入る回答を頂いている。イメージから抱きうるダチョウ、しかし、それはダチョウのほんの一面しかあらわしていないこと、本書を通読して痛感させられた。いやはや、これほどまでに『魅力』に溢れたトリだとは思わなかった…空を飛べない、鳥としては出来損ないに当たりうるトリが、実は数々の奇蹟を起こしうる可能性を多分に含んでいる。早速本書の紹介に移ろう。

本書はその初めから読者をぐっとひきつける要素がふんだんに盛り込まれている。ページをめくるごとに出会うのは、ダチョウの『オバカ』な行動・研究の取り組みとその失敗談・足立君の奮闘ect…と笑いを誘うものばかりだ。お蔭様で、私も途中で止まることなく一気に読み終えることができた。さて、その読者を惹きつける構成もさることながら、内容についても申し分ない仕上がりとなっている。その内容を少し掻い摘んで紹介していこう。

ダチョウはかなり獰猛で単一的な行動しかとれない生き物であるようだ。筆者によるとダチョウ同士で喧嘩をしたり、ひとりでに柵に頭をぶつけたりして、致命傷を負うことがよくあるらしい…人間で言うところの天然を通り越している。そして、喧嘩の果てに深く傷つけられたダチョウはフラフラながらに餌を食べる…すると、どこからともなく烏が群がり、ダチョウの露出した肉部をついばみ始める。しかし、当のダチョウは烏に『食べられている』ことに全く気付かない…この甚だしい鈍感力にも驚かされるのだが、それ以上に驚くのはダチョウが持つ自己治癒能力・免疫力の高さだ。深い傷を負ったダチョウも、一ヶ月ほどすれば傷はほぼ全快しケロリとしているという。本書はこの免疫力の高さに注目して、鳥インフルエンザの抗体や美容液、がん治療薬等様々な研究の悪戦苦闘の様子が描かれている。主として紹介されている研究スタイルは一貫しており、ダチョウに無害化したウィルスを注射し、そのダチョウが産む卵が持つ抗体を抽出して、抗体の活用方法を模索していくというものである。各々の研究の結果については、本書を手にとって確かめていただきたい。

さて、研究の過程でどうやって壁を乗り越えたのかを追うのも大変面白く、打開策となるアイデアが舞い降りてきた瞬間に何をしていたのかにも注目して欲しい。およそ、往々にしてアイデアは少し気を抜いた瞬間、雑談にふけっている時間に舞い降りてきていることに気付かれよう。アイデアの想起について貴重な紹介・洞察が記されている点、見逃したくないところである。

※本書の脱力感たっぷりの文体にひどく感嘆してしまいました。堅い文章も大切ですけれど、柔らかい文書を描く力も重要ですね。TPOに応じて、文体を使い分けることができる、そんな書き手になれるよう精進してまいります。いやはや、本書は研究者の著作であることを鑑みて、色々な面で勉強させられた一冊でありました。