2011年3月20日日曜日

The Way How to "color" the Title Matter is the Matter.

3月も瞬く間に過ぎていきます。本年度も終わり・・・いやはや、激動の一年でした、いろんな意味で。来年度はさて、どうなるやら。積極的に新しいことに挑戦する心を持つことは大切ですが、あんまりにも1人で突っ走るのも危険。迷って考えて、それでも迷うならば、周囲の仲間にお話を聞いてもらうことが大切ですね。うむ、われ、今一度、心得よ。

さて、先日、コピペの問題を取り上げた英語の文献を読み、「あぁ、世界中で同じことが起こっているんだねぇ」と、半分呆れて、半分安心(日本だけじゃない)した気分になった、書くことには口うるさいオトコえびすが紹介する一冊はこちら。

巨大翼竜は飛べたのか-スケールと行動の動物学 (平凡社新書)

翼竜は飛べなかった?この議論を耳にしたのは、私がまだ大学院生(2009年頃)だったころと記憶している。研究室の同僚と、「どうなんでしょね?」と色々語り合ったものだ。紹介されている論文を読み(大学は無料)そこで私たちが出した結論は、「あぁ、確かにこれは飛べないかもね」というものだった。

本書の執筆者は当時、上記論を発表した異論の(?)研究者だ。バイオロギングを駆使して、世界各国の生物の生態・行動調査を行っており、徹底して生データの取得に勤しむ姿が、私の目にかっこよく映るのは、自身が理系出身者だからだろうか。時に危険を顧みず、従来の考えを疑ってみる姿勢は、一流の研究者は皆備えているものであり、既存の論の流れを大きく変えてしまう画期的な論文を書くことが出来る稀有な存在でもある。誰しもがそうあると信じていたことを疑うだけでも相当な精神力と洞察力が必要だが、それ以上に、自分の思うことを確かめるために、どんな実験を重ね、どのような結果を得られれば立証できるのかを緻密に組み立てられる論理的思考力・構成力こそ、目を見張るべきであろう。

いつも通りの前置きが長くなり恐縮だが、本書の内容に移りたく。
翼竜が飛べたかについては、正直最後の章を読んでいただければよい。飛べたか飛べなかったかの「答え」だけを求めるのであれば、そこを読むだけで十分だ。しかし、そのような読み方をするのは少しもったいない。第一章から最後の章までが、見事につながっている。第一章では、ペンギンの研究結果をもとに、『筋力と体重の関係』が綴られ、第二章では亀の研究結果から、『ヒレ(翼)を動かす周波数(一秒当たりの回数)と体重の関係』について述べられており、第三章ではマンボウを例に『筋肉の重さと仕事エネルギーの関係』が、第四章ではヨーロッパヒメウを題材に『揚力と重さと飛行可能性』について書かれ、第五章では『揚力と翼面積と体重の関係』について触れられている。
これら全ての関係が、第六章の翼竜は飛べたか? の議論に活きてくる。いきなり、翼竜に話を持っていくのではなく、うまく伏線を張り、他の研究結果を面白く紹介しながら、話を主題に収斂させていくテクニックは凄いとしか言いようが無い。

普通に翼竜だけを取り上げて書こうと思えばかけたであろうが(巷に転がる恐竜ネタはたくさんあろう)、あえてその選択肢を取らず、翼・ヒレをもつ生物全般にわたって翼竜の飛行不可能性を論じている点も見過ごしてはいけない。『翼竜のフレーム』ではなく、『翼・ヒレをもつ生物』のフレームで語るからこそ、説得力が格段に上がるのだ。広く理系の学生は、本書のような論構成を是非身につけていただければと思う。もちろん、自身も身につけなければいけないわけではあるが。

さて、本論も面白いのだが、実はコラムが相当に秀逸である。とりわけ、著者の研究室の青木かがり氏の行動には頭がさがるだろう。富士山に登って、クジラを探す…並大抵の研究者魂でなければ出来ない技だ。

※久しぶりに心躍る科学系の書籍を読ませていただけました。いやはや、著者のように徹底して現場主義の姿勢を貫けるのは、一つの天性でありましょう。大学の研究室に閉じこもって研究するばかりが研究ではありません。積極的に外の世界に足を運び、自然の中で生のデータを採取することも素晴らしい研究です。外の世界にでるほど、外部の研究者・専門家・研究仲間と触れ合う機会も増えて、良いネットワークを築けるんではないでしょうか?へんなしがらみもふえそうですけどね。理系の学生は是非読んでくださいませ。将来、本を書くときに役に立つかもしれません。