「ワシントンナショナルギャラリーが所有する印象派の作品83点を集めてみました。ぜひきてちょうだい」と言わんばかりに有名な画家さんの作品が並んだ本展示。そのためか、
「有名な作家の作品ばかりだし、いかなくてもいっか〜」と避けてしまう人も多いのではないかなと思います。僕自身、「まぁ今回は見過ごしても良いかー」と思っていましたが、
友人にひどく勧められたので、しぶしぶ脚を運ぶことに。で、鑑賞し終わって、大満足すると。まったく、展示というものは脚を運んでみないとわからないものですね。
今回の展示作品は、その作家名こそ有名だけど、新しい発見がたくさんありました。「おぉ、ルノアールはこんなタッチでも描けたのか〜」「バジール、生きてりゃ間違いなく巨匠の一人になっていただろうなぁ……」「モネさん、光に溢れた時代の作品もまた、素晴らしいかったです」
注目すべきは、各々の作家の作品が一点だけではなく2点以上(一点のみの作家は二人だけ)展示されているところ。とりわけ、絵とその絵が描かれた年代の関係性は見逃しちゃうと勿体無い。
なぜそんなことを言うの?
それは本展覧会の作品構成を見ればすぐわかる。若い頃に描いた作品と、後年、画家として成熟した後に描いた作品では、筆のタッチ(緻密に細いタッチからダイナミックな勢いのあるタッチに変わった作家もいる)、構図の取り方(後年になるほどあえて特殊な構図を取っている作品もある)、配色の選定と、そこに観られる「大きな溝」。
肉体の老化・精神面の成熟・人生経験の積み重ねetc……それらが作品に及ぼす影響は、計り知れないもの。死にたい気持の時に作る作品と、めっちゃハッピーな気持ちのときに作る作品では、たとえ同じ人の作品でもがらりと絵の雰囲気が変わる。時にとんでもないオーラを纏う作品に出会うこともあるし。時に、本当にこの画家がかいたの?と疑いたくなる作品にも出会うこともある。不思議な題材/構図を持つ作品に出会って笑みを浮かべてしまうかもしれない(僕です)。そんな作品にであったときに、「何でこないやねん?」と疑問が出るようになって来たら占めたもの。その疑問をもとに、作品の楽しみ方は無限大に広げられる。
作品単品で鑑賞するのもいいが、作品群として鑑賞すると、あたらし「出会い」を手にすることが出来るはずだ。もっとも、その出会いを味わうためには、多少の勉強はしておきたい。とりわけ、歴史ある作品には、豊富な考察と解説が用意されている。
だけど、知識が多分にあるがために、新しい発見の目を積まれてしまうこともあり得る……。そこで、僕は次の3ステップで作品を鑑賞するようにしている。1、全てを取っ払った状態で純粋に鑑賞する。2、作品が描かれた背景と照らし合わせて鑑賞する。3、自分独自の(もちろん、そこで表現することばは借り物でかまわない)作品への思い・考察を作り上げる。
このステップを踏まえれば、美術鑑賞はいっそう有意義で楽しいものに変わるはず。
素晴らしい作品を観て、感動して、その良さを伝えることばが「すごかった」だけで終わらせるのはちょっと勿体無い。自分が感じたこと・考察を「ことば」に落とし込むには時間がかかるかもしれない。けど、それができると、美術鑑賞はいっそう楽しいものになるはず。
最後に僕の目に留まった作品をいくつか紹介しておきます。
マネからは、「プラム酒」。
肌色の女性が、ピンク色の服を着て、背景には紅いソファーがあるわけです。そして、左端のテーブルの脚が深い緑色で描かれているわけですね。
同系色を三つも重ねると、どうしても色が持つエネルギー(この作品では赤です)に染まりやすいのですが、補色をさし色に持ってくると途端にエネルギーのバランスが中和されるんです。もちろん、配色の量・構図の置き方もとーっても大切になってきます。その点、この作品が持つ配色バランスには大きなインパクトを感じました。
ベルトモリゾからは作品群。
今回の展示は1869年の作品が2点、1884年の作品が1点展示されていました。1869年の作品は、いわゆる印象派っぽい(マネの交友ではありますが)描画技法を用いている一方、1884年の作品にはその面影は無く、筆のタッチは粗め、配色も大味に。後者の方が、よりモリゾらしい表現技法かなと。前者はまだまだ画家として修行中の作品でしょう。しっかりと対象を捉え、絵画に落とし込んでいく能力を身につけた上で、独自の技法を身につけていくのは、画家の鉄則。マネの展示作品「スパニエル犬」をみても、それは実感できると思います。
ゴッホからは「薔薇」。
タイトルの「薔薇」から、その作風は紅い薔薇と白い薔薇が混ざった感じかな〜と思い浮かべる方が多いのではないかと思います。ですが、ゴッホが描いた薔薇は白一色のみ(光の加減か、青っぽい薔薇もみられます)。そして、驚くべきはその背景。なんと薄い緑色。
タイトルがなければ、およそここに描かれた花が薔薇だと考えるのは難しいのではないでしょうか?作品の完成度も異様に高いように感じました。先に述べたマネ同様に、中心の壷がもつ薄いゴールド色との配色対比が素晴らしい。
ただ、薔薇というタイトルには似つかわしくない「薔薇」ですが、独特のタッチと、天才的な配色バランスはゴッホだからこそなし得tあmのでしょう。一点、気にかかったのは生気に満ち満ちていること(ゴッホのいわれと異なりますね)。なんでも、この作品は病院から退院する直前に描かれた作品だとか。ゴールド色の壷に生けられた白い薔薇と緑を主とした作品構成に、春の草木の息吹を感じとれた次第です。本展覧No.1のお気に入り作品でした。
休日だったこともあり、鑑賞者数も相当数いました。もし、ゆっくり鑑賞したいならば、平日に鑑賞することをお勧めします(※金曜日は20時まで開館)。

